胃がんとは

胃がんは、胃壁の最も内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因によってがん細胞に変化する病気です。日本人に多く見られるがんの一つであり、特に50歳以上の男性の罹患率が高めです。早期の段階では、それ自体による症状が表れてこないため、多くの場合は健康診断や人間ドックの際に発見されます。

他の種類のがんと同様に、胃がんも早期発見が重要であり、早期の段階で治療を行うことができれば内視鏡による低侵襲な治療での対応が可能であるばかりでなく治癒率も高くなります。しかし、進行してしまった状態で発見されると、開腹手術が必要となるばかりか他臓器への転移も認められるようになってしまいます。健診は毎年、定期的に受け、早期発見・早期治療を心がけるようにしてください。

また、胃の中にピロリ菌が存在している場合、胃がんの発生リスクが高まります。まずはピロリ菌の検査を受け、必要に応じて消化器内科の専門医のもとで除菌することをお勧めいたします。当院ではピロリ菌検査を実施しております。

ピロリ菌除去

ピロリ菌外来とは

ピロリ菌は体長約4ミクロン(4/1000mm)の病原微生物で、この細菌が胃の中に生息することで、胃で慢性的な炎症が起きるようになります。正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」です。ピロリ菌外来では、このピロリ菌に感染した患者さまを対象にしています。

そもそも胃の中は強い酸性環境下にあるので、通常であれば細菌が生存するのには厳しい環境にあります。しかし、ピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる酵素を産生することで、胃の粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、生じたアンモニアで胃酸を中和することで胃の中でも生息可能にしています。

ピロリ菌は胃壁に取り付くと、細胞を弱らせてしまう毒素を出し始めます。すると、その菌を排除しようとして血液中の白血球やリンパ球が付近に集まってきます。この攻防が激しくなってくると、胃の粘膜が炎症を起こして胃炎になったり、胃や十二指腸の粘膜が深くえぐられて消化性潰瘍になったりすると考えられます。

幼児期に感染するピロリ菌

ピロリ菌の感染経路については詳しく特定されていません。ただ胃内に定着することから、口から入って胃に感染するのではないかと考えられており、多くの場合は幼児期に感染すると言われています。その理由は、幼児期の胃の中は酸性が弱く、ピロリ菌が生き延びやすい環境であるからです。ピロリ菌に感染している大人から、小さな子どもへの食べ物の口移しはピロリ菌の感染リスクとなりますので、注意が必要です。なお、ピロリ菌に感染するとヘリコバクター・ピロリ感染胃炎を引き起こしますが、このヘリコバクター・ピロリ感染胃炎は、胃・十二指腸潰瘍、胃マルトリンパ腫、胃ポリープなどの胃の病気をはじめ、特発性血小板減少性紫斑病や慢性じんましんの原因のひとつであり、萎縮性胃炎を経て、胃がんを引き起こすこともあります。

検査について

ピロリ菌感染の有無を調べるために実施する検査は複数ありますが、いずれの検査法でも検査実施のための適応判断が必要です。ご家族がピロリ菌感染陽性であった場合や、胃がんの家族歴がある場合、過去に消化性潰瘍の指摘を受けたことがある方は、一度、ご相談いただければと思います。

感染が判明したら除菌治療

検査によってピロリ菌による感染が判明した場合は、除菌療法を実施します。胃酸を抑える薬と2種類の抗生物質、計3種類の薬を朝夕1日2回、1週間内服します。内服終了後、およそ1ヵ月経過した後に実際にピロリ菌が除菌できたか効果判定を行います。
一回目の内服による除菌率は70%~80%程度と言われており、医師の指示通りに薬を正しく服用していたとしても、ピロリ菌の薬剤耐性のために除菌がうまくいかない場合もあります。

初回治療(1次除菌)で除菌できなかった場合には抗生物質の組み合わせを変えた2次除菌を行うこととなりますが、2次除菌でほとんどの方が除菌成功に至ります。ただし、2次除菌でも100%除菌成功するわけではないので、この場合は専門医へ相談いただくことが必要です。