肝臓内科の診療内容・特徴

  • B型・C型肝炎の診断・治療(インターフェロン・直接作用型抗ウイルス薬DAA・核酸アナログ治療を含めて)
  • 肝細胞癌の診断・治療
  • 自己免疫性肝炎
  • 原発性胆汁性胆管炎の診断・治療
  • アルコール性肝障害、脂肪肝の生活指導
  • その他、原因不明の肝機能障害の診断・治療
肝臓内科

肝炎とは

肝臓は人体の中で最大の臓器です。消化吸収した栄養素をもとに体に必要な物質を作るほか、毒物を分解したり、体に必要なエネルギーを蓄えたりする重要な役割を果たしています。この肝臓の細胞が破壊されてしまう状態が肝炎です。肝炎の原因には、ウイルス性肝炎(A型、B型、C型、D型、E型など)、薬物性、アルコール性、自己免疫性など複数種類あります。

肝炎の原因の一つであるウイルス性肝炎をみてみると、臨床経過により急性肝炎と慢性肝炎に分類されます。肝細胞が急激に障害され、発熱、全身倦怠感、黄疸(皮膚や白眼が黄色くなる)などの症状を起こすものが急性肝炎で、A型、B型、E型肝炎ウイルスが原因として多く、自然経過で治癒することが多いとされています。一方、長期間にわたって肝障害持続するものが慢性肝炎です。原因としてはB型、C型肝炎ウイルスによるものが多く、長期間にわたる肝障害の結果、徐々に肝臓が線維化し肝硬変に至ることもあります。

なお、感染経路についてはA型とE型肝炎ウイルスが経口摂取、B型、C型、D型肝炎ウイルスは血液を介すると言われています。

B型肝炎とは

B型肝炎ウイルス(HBV)は肝臓に感染して炎症(肝炎)を起こします。HBVには、日本人の130~150万人(およそ100人に1人)が感染していると推定されており、肝炎が持続すると慢性肝炎から肝硬変、さらに肝臓がんへと病状が進展する可能性があります。
HBVを含んだ血液や体液が人体に入ることで感染が成立するため、感染の原因として、輸血、性行為、刺青、注射針の打ち回し、針刺し事故や母子感染が挙げられます。子供へのHBV感染は、HBVに感染した母親から生まれる際に起こる母子感染が一般的ですが、出生後でもHBVを含んだ血液や体液が、傷口から体内に侵入することで感染が成立することもあり、父親からの家族内感染が報告されることもあります。

出生時ないし乳幼児期にHBVに感染すると、9割以上で持続感染に移行します。そのうち約9割は若年期に病態の安定した非活動性キャリアとなります。しかし、残り1割ではウイルスの活動性が持続して慢性肝炎の状態が続き、年率約2%で肝硬変へ移行し、肝臓がん、肝不全に進展してしまいます。

なお、母子感染の予防のためにはB型肝炎免疫グロブリンの注射とワクチンの接種が必要となりますので、出産に際して、あらかじめ産婦人科の先生や小児科の先生と相談しておくことが大切です。また、乳幼児に対するB型肝炎ワクチンは定期接種に定められていますので、公費での接種が可能となっています。ワクチン接種によって感染予防対策となりますので、積極的に接種されるようにしてください。

一方、成人に達してからの感染では感染後早期に免疫応答が起こることで、急性肝炎後にHBVが排除され肝炎が沈静化するのが一般的でしたが、HBVゲノタイプAの増加により近年では成人期の感染でも慢性肝炎に移行する症例が増えてきています。

HBVの治療目標は、肝炎の活動性を抑制することで肝臓線維化進展を抑制し、慢性肝不全と肝細胞がん発生を抑制することにあります。そのために、HBV感染者に対してはインターフェロン(IFN)と核酸アナログ製剤を使用します。IFNは期間を限定して投与することで持続的効果を目指す治療で、日本では1987年から治療が開始されています。一方、核酸アナログ製剤は、HBVのゲノタイプによらず強力なDNA増殖抑制作用をもつため、自然治癒の可能性が低い非若年者でも肝炎を沈静化させることが可能です。

C型肝炎とは

C型肝炎ウイルス(HCV)に一度感染すると、健康成人への感染であっても急性の経過で治癒するものは約30%で、感染例の70%は持続感染することで慢性肝炎へと移行します。慢性化した場合には自然にウイルスが排除されるのは年率0.2%と稀であり、ウイルスの持続感染で炎症が持続した結果、肝硬変や肝細胞癌へ進展してしまいます。そのため、HCVの治療目標は抗ウイルス治療を行うことでHCVの排除を目指すことが重要となり、インターフェロン(interferon; IFN)やIFNを使用しない(IFN free)直接型抗ウイルス薬(direct acting antivirals; DAA)を用いた治療が実施されています。これらIFNやDAAによってHCVが排除されることにより肝臓がんの抑制効果が報告されてはいますが、HCV排除後でも肝臓がんの発生は起こりえるため、専門医による適切なフォローが長期予後の改善、すなわち肝臓がんによる肝疾患関連死の抑制に重要となります。HCV患者様の中には、健康診断や他疾患の治療のために実施した血液検査でHCV陽性を指摘される方もあります。当クリニックでは肝臓専門医が診療を担当させていただいておりますので、ご相談いただければと思います。